[大弦小弦]静かなる暗闘

引用元:沖縄タイムス

 検察官にとって誕生日は特別な意味を持つ。63歳を迎えたら退官するのが決まり。ほかの同僚と比べて日付が早いのか遅いのか。検事総長という頂点に上り詰めるには、その巡り合わせと切っても切り離せない

▼このからくりも随分、知れ渡った。黒川弘務東京高検検事長の定年が8月まで延長されたのに伴い、メディアで盛んに吹聴されたからだ。「安倍政権の守護神」の異名を持つ黒川氏を検察トップに据えるためではないか、と

▼ここで疑問が浮かぶ。なぜ政府は、検察官の定年63歳を65歳へ引き上げる検察庁法改正案の今国会での成立にこだわるのか。黒川氏の定年延長によって、首尾よく事が運ぶはずではないのか

▼事後的に黒川氏の定年延長を正当化するため、とも考えられるが、どうも理由としては弱いような。そう考えていると、検察筋に詳しい知人が耳打ちしてきた。「今の検事総長の稲田伸夫氏は、今夏に辞めるつもりはないらしい」

▼これなら合点がいく。法改正せずとも、検察官の中で総長だけが定年は65歳。現在63歳の稲田氏はその気になれば来年8月まで務めることができる。現職が退かなければ、黒川氏の定年をさらに延ばすしかない

▼稲田氏は、安倍政権の手法に批判的な立場だとか。コロナ禍のさなか、人事を巡る権力闘争が水面下でうごめいている。(西江昭吾)

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